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AIの「使い走り」にはCPUが要る — アンソロピックがアカマイと7年116億ドル契約、払うほど株主になる条件付き

2026年9月25日(更新 2026年10月17日) MBI経済ニュース編集部

AIの「使い走り」にはCPUが要る — アンソロピックがアカマイと7年116億ドル契約、払うほど株主になる条件付き

アンソロピックがアカマイと7年116億ドルのクラウド契約を結んだ。買ったのはGPUではなくCPUの計算時間で、AIエージェントの検索・コード実行・ツール呼び出しといった「使い走り」を、アカマイの数千拠点で動かす。追加で最大90億ドル、払うほどアカマイ株を最大5%取得できるワラント付き。アカマイは約55億ドルの設備投資とメモリの先買いに動き、売上は2027年後半から。株価は時間外で20%超上昇。AI投資がGPUの山とCPUの網の2層で積み上がる意味を、投資と生活の目線で整理する。

アンソロピックがアカマイと7年116億ドル — 買ったのは「CPUの計算時間」

米国のアカマイ・テクノロジーズが9月24日の取引終了後、AI開発のアンソロピックと7年間で116億ドルのクラウド利用契約を結んだと発表しました。アカマイは、ウェブサイトの表示を速くする配信網やセキュリティで知られる会社で、世界に数千の拠点を持っています。

今回の契約で目を引くのは、中身です。アンソロピックが買ったのは、AIの計算で主役とされてきたGPUではなく、CPUの計算時間でした。アカマイの拠点に分散したCPUで、アンソロピックの処理を動かします。

契約はさらに最大90億ドルまで上乗せでき、すべて使えば合計は約200億ドルになります。一方で、アカマイは2026年の売上見通しを変えていません。売上が立ち始めるのは2027年の後半からで、2028年末に年17億ドル前後のペースに達する見込みです。

なぜGPUではなくCPUなのか — エージェントの「使い走り」はCPUで動く

AIの計算といえば、NVIDIAのGPUが代名詞でした。GPUは、モデルが文章を読んで答えを考える「推論」の部分を大量にこなすのが得意です。

ところが、AIが自分で作業を進めるエージェントになると、事情が変わります。エージェントは、考える合間にウェブを検索する、ファイルを開く、書いたコードを実際に動かす、別のツールを呼ぶといった作業を何度も挟みます。いわば「使い走り」の部分で、これはCPUの仕事です。AMDのマドゥ・ランガラジャン氏は、現実的なエージェントの処理8段階のうち7段階はCPUだけで動くと述べています。

しかも使い走りは、利用者の近くで動かしたほうが待ち時間が短くなります。数千の拠点を持つアカマイが選ばれたのは、そのためだと見られています。エバコアISIは、CPUの処理は電力あたりの売上が高く、粗利率もGPUより良いと指摘しました。

払うほど株主になる — ワラント「最大5%」の仕組み

この契約には、もうひとつ変わった条件が付いています。アカマイはアンソロピックに、自社株を1株111.33ドルで取得できる権利(ワラント)を渡しました。上限は発行済み株式の約5%です。

  • 今回の116億ドルの契約で、約2%分が確定
  • 残りの約3%は、追加の利用に応じて。30億ドル使うごとに約1%

つまりアンソロピックは、アカマイにお金を払えば払うほど、アカマイの株主に近づく仕組みです。発表後に株価が行使価格の111.33ドルを上回れば、その差はアンソロピック側の含み益になります。

取引先に株を渡して大口の契約を取る形は、AIの世界では前例があります。2025年10月には、AMDがOpenAIとの半導体供給契約に合わせて、OpenAIに最大1億6,000万株のワラントを付けました。売る側にとっては大口の客をつなぎ止める手段ですが、既存の株主にとっては、将来の持ち分が薄まることを意味します。

市場の値付け — 時間外で20%超、「バリュー株から高成長株へ」

株式市場の反応は大きく、アカマイ株は発表直後の時間外取引で20%を超えて上昇しました。翌25日の取引では上げ幅を縮める場面もあり、値動きの荒さも目立ちました。

アナリストは目標株価を相次いで引き上げています。

  • パイパー・サンドラー:125→158ドル。「財務の姿を大きく変える」とし、バリュー株から高成長株へ移ると評価
  • BofA:175→185ドル。追加の90億ドル枠に注目
  • JPモルガン:158→167ドル(評価は中立のまま)

規模感をつかむには、次の比較が分かりやすいです。満額で動いたときの年約17億ドルは、アカマイの2025年の売上(42億800万ドル)の約4割にあたります。アカマイのクラウド基盤事業は、2026年4〜6月期の売上が9,900万ドルでした。1社の客が、事業の大きさを数倍に変える契約だということです。

先に出ていくお金 — 設備投資55億ドルと、メモリの「先買い」

投資の目線で押さえておきたいのは、お金の出入りの順番です。

アカマイは、この契約に応えるための設備に約55億ドルを投じる見込みです。そのうえで、2026年の設備投資を約17億ドル上積みし、メモリなどの部品を先に押さえるとしています。AI向けの需要でメモリは取り合いになっており、あとから買おうとすると値段も納期も読めないからです。

一方で、売上が立ち始めるのは2027年の後半から。つまり、支出が先、売上があとです。その間の資金は、手元資金や借り入れでつなぐことになります。同じ25日、米国の10年国債の利回りは5.21%まで上がっていました。お金を借りる値段が高い時期に、先に大きく払う形です。

もうひとつは1社への集中です。クラウド基盤事業の売上の大半が、数年でアンソロピック1社になる可能性があります。アンソロピックの成長が続けば大きな追い風ですが、計画が変われば、その影響もそのまま受ける構造です。株価が一日で大きく動いたのは、この両方を市場が値付けしようとしているからです。

生活への影響 — AIの「待ち時間」と、メモリの値段

暮らしの側で効いてくるのは、2つです。

ひとつはAIの待ち時間です。いまのAIエージェントに調べものや予約、書類づくりを頼むと、答えが返るまでに数十秒から数分かかることがあります。その時間の多くは、モデルが考えている時間ではなく、検索したり、ページを開いたり、ツールを呼んだりしている時間です。この部分を利用者の近くのCPUで動かせれば、体感の速さが変わります。AIに頼める仕事の幅は、賢さだけでなく、この待ち時間で決まっていきます。

もうひとつはメモリの値段です。アカマイのように、AI向けの設備のためにメモリを先に買い込む動きが広がると、パソコンやスマートフォン、ゲーム機に使うメモリも取り合いになります。身近な電子機器の値段が下がりにくくなる、あるいは上がる、という形で家計に届く可能性があります。

なお、今回の契約でAIの利用料がすぐに変わるわけではありません。売上が立つのは2027年の後半からで、設備もこれから作ります。効いてくるのは来年以降です。

同じ24時間 — マスク氏「Colossus 2のGPUを年末までに倍以上」

同じ24時間には、対照的な動きもありました。イーロン・マスク氏がXへの投稿で、xAIのデータセンター「Colossus 2」のNVIDIA製チップを、年末までに倍以上にする可能性があると明かしたのです(Bloomberg報道)。

  • 現在:GB200が11万個、GB300が44万個
  • 追加:GB300を来週・11月・12月下旬に各22万個

GPUを何十万個単位で積み上げる競争は、まったく止まっていません。そのうえで、アンソロピックの契約は、GPUの外側にもう一つの設備の層が要るようになったことを示しています。考えるためのGPUの山と、使い走りをするCPUの網。AIへの投資は、この2つの層で積み上がっていくことになります。

投資家にとっては、「AI関連」といえば半導体とデータセンターだけだった見取り図に、配信網、エッジ、メモリといった、これまで地味とされてきた会社が加わり始めた、ということでもあります。

注意しておきたい点と、次に見るポイント

数字を読むときに、取り違えやすいところがあります。

  • 116億ドルは7年間の合計です。1年あたりではありません。満額で動いたときの年間の売上は、約17億ドルと見込まれています。
  • 売上が立つのは2027年後半からです。2026年の売上見通しは変わっていません。
  • ワラントは「株を取得できる権利」です。アンソロピックが、いまアカマイの大株主になったわけではありません。
  • 報道によって金額が「120億ドル」とされることがありますが、会社の発表は116億ドルです。

そのうえで、これから見ておきたいのは2つです。ほかのAI企業が、同じようにCPUやエッジの容量を長期契約で押さえに来るか。続けば、今回は1社の話ではなく、エージェント時代の設備の形になります。そして、メモリの値段。AI向けの先買いが家電やパソコンの値札に表れてくるかどうかです。

まとめ

アンソロピックが、アカマイと7年間で116億ドルの契約を結びました。買ったのはGPUではなくCPUの計算時間で、AIエージェントが検索やコード実行、ツール呼び出しといった「使い走り」をこなすための容量です。追加で最大90億ドル、合計約200億ドルまで広がる余地があり、アンソロピックは払うほどアカマイ株を最大5%取得できる権利も手にしました。

アカマイは約55億ドルの設備投資とメモリの先買いに動き、売上が立つのは2027年後半から。支出が先、売上があとの構造です。

AIへの投資は、考えるためのGPUの山に加えて、使い走りをするCPUの網という、2つ目の層で積み上がり始めました。エージェントを使う側は、モデルの料金だけでなく、その前後の処理にかかる時間とお金も見ておいてください。

出典・参考情報

  • Akamai「Akamai Announces $11.6 Billion Multi-year Agreement with Anthropic to Support Growing Demand」2026年9月24日 — akamai.com
  • SiliconANGLE「Akamai shares jump more than 20% on $11.6B Anthropic computing deal」2026年9月24日 — siliconangle.com
  • Forbes「Anthropic Signs $11.6 Billion, Seven-Year CPU Deal With Akamai」2026年9月25日 — forbes.com
  • Yahoo Finance「Akamai-Anthropic Deal's Magnitude Is Impressive, Says Piper Sandler」2026年9月25日 — finance.yahoo.com
  • The Motley Fool「Stock Market Midday, Sept. 25: AI Momentum Lifts Markets as Akamai Soars on Anthropic Deal」2026年9月25日 — fool.com
  • Bloomberg「Anthropic Strikes $12 Billion Deal With Akamai for AI Computing」2026年9月24日 — bloomberg.com
  • Bloomberg「Elon Musk Aims to Double Colossus 2's Nvidia Chips by Year-End」2026年9月25日 — bloomberg.com

※AMDとOpenAIのワラント(2025年10月、最大1億6,000万株)は両社の2025年10月6日の発表による。本記事は投資助言ではありません。

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