審査のポイント

決算書で見られるポイント|審査担当者の視点を解説

2025年12月5日(更新 2026年10月25日) MBI経済ニュース編集部

決算書で見られるポイント|審査担当者の視点を解説

銀行融資やローン審査で決算書のどこを見られる?審査担当者の視点から、貸借対照表・損益計算書のチェックポイント、重要な財務指標、赤字でも審査に通るケースまで詳しく解説します。

「決算書のどこを見られるのだろう」「赤字だと絶対に通らない?」——融資の審査を控えた経営者にとって、決算書への不安は尽きません。

決算書は、融資審査において最も重視される書類です。審査担当者がどこを見ているかを理解し、自社の決算書の強み・弱みを把握しておくことで、審査への対策が立てられます。

本記事では、審査担当者の視点から、決算書で見られるポイントを詳しく解説します。

なぜ決算書が審査で重要なのか

決算書でわかること

決算書は、会社の「健康診断書」のようなものです。審査担当者は決算書を見ることで、以下のことを判断します。

  • 会社の財務状況は健全か
  • 事業で利益を出せているか
  • 借入金を返済する能力があるか
  • 倒産リスクはどの程度か
  • 経営者の管理能力はどうか

決算書の数字は、経営者の説明よりも客観的で信頼性が高いため、審査では最も重視されます。

過去3期分が求められる理由

融資審査では、通常「直近3期分」の決算書を求められます。これには理由があります。

1. 傾向を把握するため
1期だけでは、その年がたまたま良かった(悪かった)のか判断できません。3期分を見ることで、売上・利益が安定しているか、改善傾向か、悪化傾向かがわかります。

2. 異常値を発見するため
急激な売上増加や利益の変動がある場合、その原因を確認します。粉飾決算の発見にもつながります。

3. 将来予測の参考にするため
過去3期の推移から、今後の業績を予測します。

ポイント:創業間もない場合は、1〜2期分でも審査を受けられます。その場合は、事業計画書や資金繰り表がより重視されます。

貸借対照表(B/S)で見られるポイント

貸借対照表は、決算日時点での会社の「財政状態」を表す書類です。「会社がどれだけの資産を持ち、どれだけの負債があるか」がわかります。

自己資本比率

自己資本比率は、総資産に占める純資産の割合です。会社の財務基盤の安定性を示す最も重要な指標の一つです。

【計算式】

自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産 × 100

評価の目安

自己資本比率 評価
40%以上 優良(財務基盤が非常に安定)
20〜40% 良好(一般的な水準)
10〜20% やや注意(改善が望ましい)
10%未満 要注意(財務基盤が脆弱)
マイナス(債務超過) 危険(融資は非常に困難)

流動比率・当座比率

流動比率と当座比率は、短期的な支払能力を示す指標です。

流動比率

【計算式】

流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

目安:120%以上が望ましい(100%を下回ると短期的な支払いに不安)

当座比率

【計算式】

当座比率 = 当座資産(現金・預金・売掛金・受取手形)÷ 流動負債 × 100

目安:100%以上が望ましい(在庫を除いたより厳格な指標)

純資産の推移

純資産(自己資本)が年々増加しているか、減少しているかも重要なチェックポイントです。

  • 増加傾向:利益が蓄積されており、好ましい状態
  • 横ばい:利益が出ていないか、配当で流出している
  • 減少傾向:赤字が続いており、要注意

要注意科目(審査でマイナス評価になりやすい項目)

貸借対照表の中には、審査でマイナス評価になりやすい科目があります。

役員貸付金

  • 会社のお金を役員が私的に使っていると判断される
  • 経営者のモラルを疑われる
  • 多額の場合は実質的な債務超過と見なされることも

仮払金・立替金

  • 長期間精算されていないと不透明と判断される
  • 実態のない資産の可能性を疑われる

貸付金

  • 関係会社や取引先への貸付は回収可能性を疑われる
  • 本業と関係ない資産と見なされる

過大な在庫

  • 売上に対して在庫が多すぎると不良在庫の疑い
  • 在庫水増しによる粉飾の可能性を疑われる

⚠ 注意

これらの科目がある場合、審査担当者から内容の説明を求められます。正当な理由があれば問題ありませんが、説明できない場合は大きなマイナス評価となります。

損益計算書(P/L)で見られるポイント

損益計算書は、1年間の「経営成績」を表す書類です。「どれだけ売り上げて、どれだけ利益を出したか」がわかります。

売上高の推移

売上高は、事業の規模と成長性を示す最も基本的な指標です。

審査担当者が見るポイント

  • 増加傾向か、減少傾向か、横ばいか
  • 急激な変動がある場合、その原因は何か
  • 季節変動はあるか、その理由は何か

評価の傾向

  • 安定的に増加:最も好ましい。事業が順調に成長している
  • 横ばい:可もなく不可もなく。業界の状況次第
  • 減少傾向:要注意。原因と対策の説明が必要
  • 急激な増加:好ましいが、持続可能性を確認される

営業利益

営業利益は、本業で稼いだ利益です。売上高から売上原価と販管費を引いた金額です。

【計算式】

営業利益 = 売上高 − 売上原価 − 販売費及び一般管理費

審査でのポイント

  • 営業利益がプラスか:本業で利益を出せているか
  • 営業利益率(営業利益÷売上高):業界平均と比較
  • 推移:改善傾向か悪化傾向か

営業利益が赤字の場合、「本業で稼げていない」と判断され、審査では厳しく見られます。

経常利益

経常利益は、営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を引いた利益です。会社の継続的な収益力を示します。

【計算式】

経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用

審査でのポイント

  • 経常利益がプラスか:継続的に利益を出せているか
  • 営業利益との差:営業外費用(支払利息など)の負担が大きくないか
  • 推移:安定しているか

当期純利益

当期純利益は、全ての収益と費用を計算した最終的な利益です。

【計算式】

当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 − 特別損失 − 法人税等

当期純利益がプラスであれば、純資産が増加し、財務基盤が強化されます。マイナス(赤字)が続くと、純資産が減少し、債務超過に近づきます。

特別損益の内容

特別損益は、臨時的・例外的な損益です。審査担当者は、特別損益の内容にも注目します。

特別利益の例

  • 固定資産売却益
  • 投資有価証券売却益
  • 保険金収入

特別損失の例

  • 固定資産売却損・除却損
  • 投資有価証券評価損
  • 災害損失
  • 貸倒損失

⚠ 注意

特別利益で黒字を確保している場合、「本業では稼げていない」と判断されます。逆に、特別損失による一時的な赤字であれば、説明次第でマイナス評価を軽減できます。

キャッシュフロー計算書で見られるポイント

キャッシュフロー計算書は、現金の動きを示す書類です。中小企業では作成義務がない場合もありますが、審査では重視されます。

営業キャッシュフロー

営業キャッシュフローは、本業から生み出された現金の増減です。

審査でのポイント

  • プラス:本業で現金を稼げている。好ましい状態
  • マイナス:本業で現金が流出している。要注意

利益が出ていても、売掛金の回収が遅れたり、在庫が増えたりすると、営業キャッシュフローはマイナスになることがあります。「黒字倒産」を防ぐためにも、営業キャッシュフローは重要な指標です。

投資キャッシュフロー

投資キャッシュフローは、設備投資や資産売却による現金の増減です。

審査でのポイント

  • マイナス:設備投資を行っている。成長企業では通常マイナス
  • プラス:資産を売却して現金を得ている。理由の確認が必要

財務キャッシュフロー

財務キャッシュフローは、借入・返済や配当による現金の増減です。

審査でのポイント

  • プラス:借入を増やしている
  • マイナス:借入を返済している

3つのキャッシュフローのバランス

審査担当者は、3つのキャッシュフローのバランスも見ています。

営業CF 投資CF 財務CF 評価
+ − − 優良型:本業で稼いだ金で投資・返済
+ − + 積極投資型:借入で成長投資
+ + − リストラ型:資産売却で返済
− + + 危険型:本業赤字を借入と資産売却で補填

審査で重視される財務指標一覧

審査担当者が特に重視する財務指標をまとめます。

指標 計算式 目安
自己資本比率 純資産÷総資産×100 20%以上
流動比率 流動資産÷流動負債×100 120%以上
当座比率 当座資産÷流動負債×100 100%以上
売上高営業利益率 営業利益÷売上高×100 業界平均以上
売上高経常利益率 経常利益÷売上高×100 3%以上
借入金月商倍率 借入金総額÷(売上高÷12) 6ヶ月以内
債務償還年数 借入金÷(税引後利益+減価償却費) 10年以内
インタレスト・カバレッジ・レシオ (営業利益+受取利息)÷支払利息 2倍以上

ポイント:これらの指標は業種によって適正値が異なります。自社の業界平均と比較することで、相対的な位置づけがわかります。

赤字でも審査に通るケース

「赤字だと融資は絶対に無理」と思われがちですが、赤字でも審査に通るケースはあります。

一時的な赤字の場合

以下のような一時的な赤字であれば、原因と改善見込みを説明することで審査に通る可能性があります。

  • 災害や事故による一時的な損失
  • 大型設備投資に伴う減価償却費の増加
  • 新規事業立ち上げによる先行投資
  • 一時的な受注減少(回復見込みあり)

売上が伸びている場合

赤字でも売上が伸びている場合は、「成長途上の投資段階」と判断されることがあります。特にスタートアップや成長企業では、売上成長を優先して一時的に赤字になることは珍しくありません。

改善計画が明確な場合

赤字の原因を分析し、具体的な改善計画を示すことで、審査に通る可能性が高まります。

改善計画に含めるべき内容

  • 赤字の原因分析
  • 具体的な改善施策
  • 改善のスケジュール
  • 黒字化の見込み時期
  • 数値目標

営業キャッシュフローがプラスの場合

損益計算書上は赤字でも、営業キャッシュフローがプラスであれば、「現金は稼げている」と判断されます。減価償却費が大きい企業などに多いケースです。

審査に不利になる決算書の特徴

以下のような特徴がある決算書は、審査で厳しく見られます。

2期以上連続の赤字

1期だけの赤字は一時的なものと判断される可能性がありますが、2期以上連続すると「構造的な問題がある」と見なされます。

  • 2期連続赤字:融資は困難
  • 3期連続赤字:融資はほぼ不可能

債務超過

純資産がマイナス(債務超過)の状態は、「資産を全て売却しても負債を返済できない」状態です。銀行融資は原則として不可能になります。

粉飾の疑いがある数字

審査担当者は、粉飾決算の兆候にも注意を払っています。

  • 売掛金の急激な増加(売上と連動しない)
  • 在庫の急激な増加
  • 売上総利益率の急激な改善
  • 現金預金と売上のバランスが不自然

役員貸付金・仮払金の多さ

前述の通り、多額の役員貸付金や長期間精算されない仮払金は、審査で大きなマイナス評価となります。

🚫 粉飾決算は絶対にNG

審査を通すために決算書を粉飾することは、詐欺罪に問われる可能性があります。また、金融機関との信頼関係が完全に崩れ、今後の融資が不可能になります。絶対にやめましょう。

決算書を改善するためのポイント

審査に向けて、合法的な範囲で決算書を改善するポイントを解説します。

期中でできること

1. 売掛金の回収を促進する
回収が滞っている売掛金を回収し、現金を増やします。

2. 不良在庫を処分する
動きのない在庫を処分し、在庫を適正化します。

3. 役員貸付金を返済する
役員から会社への返済を進め、役員貸付金を減らします。

4. 仮払金を精算する
長期間残っている仮払金を精算します。

5. 経費を見直す
無駄な経費を削減し、利益率を改善します。

決算対策のタイミング

決算対策は、決算日の3〜6ヶ月前から計画的に行うことが重要です。決算直前では対策できることが限られます。

決算前にやるべきこと

  • 仮決算を行い、着地見込みを把握する
  • 改善可能なポイントを洗い出す
  • 計画的に改善施策を実行する
  • 税理士と相談し、最適な決算対策を立てる

税理士への相談

決算書の改善については、顧問税理士に相談することをおすすめします。税理士は決算書作成のプロであり、審査を意識した適切なアドバイスを得られます。

また、融資に強い税理士であれば、審査担当者がどこを見るかを熟知しており、効果的な対策を提案してもらえます。

よくある質問(FAQ)

決算書はどこまで詳しく見られますか?

決算書本体だけでなく、勘定科目内訳明細書も確認されます。売掛金の相手先、借入金の内訳、役員貸付金の有無など、詳細な内容まで見られると考えておきましょう。

赤字でも絶対に融資は受けられませんか?

絶対ではありません。一時的な赤字で原因と改善計画が明確であれば、審査に通る可能性はあります。ただし、2期以上連続の赤字や債務超過の場合は非常に厳しくなります。その場合は、ファクタリングなど別の資金調達方法を検討しましょう。

個人事業主の場合は何を見られますか?

個人事業主の場合は、確定申告書と青色申告決算書(または収支内訳書)が審査対象となります。売上・経費・所得の推移、事業の継続性などが確認されます。

決算書がなくても融資は受けられますか?

創業間もない場合は、決算書がなくても融資を受けられる可能性があります。日本政策金融公庫の創業融資などが該当します。その場合、事業計画書や自己資金、経営者の経験などで審査されます。

税務署の受付印がない決算書でも大丈夫ですか?

原則として、税務署の受付印(またはe-Taxの受信通知)がある決算書が必要です。受付印がない場合、正式に申告されたものか確認できないため、審査で認められないことがあります。

まずは相談してみよう

「審査に通るか不安」「どの資金調達方法が自分に合っているかわからない」という方は、お気軽にご相談ください。

当サイトのAIコンサルタントは、24時間いつでもあなたの資金調達の悩みをお聞きします。状況に合った最適な方法を一緒に考えましょう。

また、金融機関データベースでは、銀行・ノンバンク・ファクタリング会社など700社以上の情報を掲載しています。審査基準や特徴で比較検討できますので、ぜひご活用ください。

まとめ

この記事のポイント

  • 決算書は融資審査で最も重視される書類。3期分の推移が見られる
  • 貸借対照表では自己資本比率20%以上、流動比率120%以上が目安
  • 役員貸付金・仮払金・過大な在庫は審査でマイナス評価
  • 損益計算書では営業利益・経常利益のプラスが重要
  • 特別利益に頼った黒字は評価されにくい
  • 赤字でも一時的なもので改善計画があれば審査に通る可能性あり
  • 2期連続赤字・債務超過は融資が非常に困難。ファクタリングを検討
  • 粉飾決算は絶対にNG。発覚すれば詐欺罪に問われる

決算書は会社の健康診断書です。審査担当者の視点を理解し、自社の決算書の強み・弱みを把握することで、審査への対策が立てられます。本記事を参考に、審査に備えましょう。

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