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半導体株が弱気相場入り — SOX指数が6月高値比20%安、引き金は中国製の格安AI「Kimi K3」

2026年7月21日(更新 2026年10月20日) MBI経済ニュース編集部

半導体株が弱気相場入り — SOX指数が6月高値比20%安、引き金は中国製の格安AI「Kimi K3」

米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が6月末の最高値から20%超下落し、テクニカルな弱気相場に入った。引き金は中国Moonshot AIが公開した2.8兆パラメータのオープンモデル「Kimi K3」で、100万トークンあたり入力3ドル・出力15ドルという低価格がAI設備投資の回収前提を揺るがした。半導体セクターの時価総額は6月22日以降で3.3兆ドル減少し、韓国ではSK Hynixが最高値比40%安、120万口座超が追証、うち32万〜36万口座が強制決済となった。7月20日はSOXが3%超反発したものの、7月22日のAlphabetを皮切りにMicrosoft・Meta(7/29)、Amazon(7/30)と続く決算週で、4社合計約7,250億ドルのAI設備投資計画が維持されるかが当面の焦点となる。

半導体指数が弱気相場に入った

半導体指数が「弱気相場」に入った

米国の半導体株の動きを示すフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が、7月17日にテクニカルな弱気相場に入りました。先週1週間だけで約10%下落し、6月末につけた過去最高値からの下落率が20%を超えたためです(Bloomberg報)。

直前まではむしろ過熱気味でした。同指数は3月の安値から6月末のピークまで105%上昇しています。わずか3か月で2倍を超えた相場が、そこから1か月足らずで2割を吐き出した計算になります。

下げ幅は個別銘柄でさらに大きくなっています。メモリ関連のSanDisk、Western Digital、Micron Technologyの下落が目立ち、半導体セクター全体の時価総額は6月22日以降で3.3兆ドル失われました。

引き金は中国発の安すぎるAI

引き金は、中国発の「安すぎるAI」

売りのきっかけは、中国のAIスタートアップMoonshot AIが公開した新モデル「Kimi K3」でした。パラメータ数は2.8兆で、オープンソースモデルとしては世界最大級。Arena.aiのフロントエンドコード部門のリーダーボードでは一気に17ランク上昇し、AnthropicのFable 5やOpenAIのGPT-5.6 Solを抜いて首位に立ちました。

市場をより驚かせたのは価格です。Kimi K3は100万トークンあたり入力3ドル、出力15ドル。AnthropicのFable 5が入力10ドル、出力50ドルであることを踏まえると、およそ3分の1の水準です。

Silicon Data社のリサーチ責任者Steve Hou氏は「能力で追いついてきたオープンソースモデルが市場に出てくれば、フロンティア研究所には確実に価格圧力がかかる」と指摘し、昨年の「DeepSeekショック」に似た、あるいはそれ以上の第2波になり得ると警告しています。

韓国では追証が連鎖した

韓国では「追証」が連鎖した

この売りは米国にとどまりませんでした。韓国のSamsung ElectronicsやSK Hynixといった半導体大手の株価も7月中旬から大きく調整し、SK Hynixは先月つけた過去最高値から約40%下落しています。

影響がとりわけ深刻だったのは、信用取引を使っていた個人投資家です。韓国市場では120万口座を超えるレバレッジ取引が追証(マージンコール)に達し、うち32万〜36万口座が強制決済となりました。半導体セクターに連動する2倍レバレッジETFの中には、この局面で最大ドローダウンが66%を超えたものもあります。

ここが今回の相場でいちばん生活に近い部分です。指数の下落率は20%でも、2倍のレバレッジをかけていれば体感は40%以上。値動きの方向を当てていたかどうかより、途中の下げに耐えられる建て方をしていたかが生死を分けました。

月曜は反発、それでも残るチップ疲れ

月曜は反発、それでも残る「チップ疲れ」

7月20日(月)の米国市場では、前週の急落の反動で半導体株が買い戻されました。寄り付きの時点でSOX指数は3.0%超上昇し、ナスダック総合が1.1%、S&P500が0.7%、ダウ平均が0.3%それぞれ上昇。TSMCのADRも2.7%近く上げました。

ただし、この反発を底打ちと見るには早すぎます。Carson Groupの首席市場ストラテジスト、Ryan Detrick氏は「市場は今『チップ疲れ』の兆候を見せている」と述べ、こう続けました。「チップ株は直近4週のうち3週で下落しており、市場の懸念は同じ論点に集中したままだ。これらの株は単純に走りすぎていて、いまは再評価をして現実に戻っているところだ」

個別銘柄の振れ幅も、その「走りすぎ」を裏づけています。Intelは年初来で160%超上昇していますが、7月だけで33%下落しました。

今週の主役はメガキャップの決算

今週の主役は、メガキャップの決算

市場の視線は、すでに今週の決算発表に移っています。S&P500構成銘柄のうち80社超が今週決算を発表しますが、主役は明確です。7月22日(水)のAlphabetを皮切りに、7月29日にMicrosoftとMeta、7月30日にAmazonが続きます。

焦点は一点、AI設備投資(capex)の計画に変更があるかどうかです。この4社が2026年に予定するAI関連の設備投資は合計で約7,250億ドル。2025年の約4,100億ドルから約77%増という規模で、Alphabet単体でも2026年通年で1,800〜1,900億ドルを見込んでいます。

KBC Securitiesのグローバル株式責任者Andrea Gabellone氏は「今週市場が最も注目するのは、ハイパースケーラーの収益化能力と設備投資計画だ。経営陣が前向きなメッセージを出せば、AI投資が冷え込んでいるという直近の懸念を和らげられる」と述べています。逆にHennion & Walsh Asset ManagementのKevin Mahn氏は、Alphabetのような大手がAI関連支出の見通しを引き下げれば、AIエコシステム全体に「連鎖反応」が起きかねないと警告しました。

そこまで悪くないという反論もある

「そこまで悪くない」という反論もある

もっとも、今回の下落を過剰反応と見る向きも少なくありません。

反論の中心はこうです。新しいモデルが計算効率を高めたとしても、高帯域幅メモリ(HBM)をはじめとする大量のハードウェア資源は依然として必要であり、半導体需要そのものが減るとは限らない、という指摘です。効率が上がれば単位あたりのコストは下がりますが、その分だけ使われる量が増えるのであれば、総需要はむしろ拡大します。

実際、Morgan Stanleyはテック大手による累計AI投資が2027年には1兆ドルを超える可能性があると試算しています。決算シーズンの滑り出しも悪くありません。LSEGの集計では、第2四半期の決算を発表済みのS&P500企業49社のうち90%が市場予想を上回り、四半期全体では前年同期比26%の増益が見込まれています。4月初旬時点の予想(19.2%増)から上振れしている計算です。

投資・経済への示唆

投資・経済への示唆 — AIが安くなるほど、チップ株は苦しい

投資の観点で見ると、今回の下落は3つのことを示しています。

第一に、「AIが安くなる」ことは、AI関連株にとって必ずしも好材料ではないということ。技術の進歩と株価の上昇はふつう同じ方向を向きますが、AIインフラに限っては逆になり得ます。高価な計算資源が希少なままであるという前提の上に、これまでの半導体相場は積み上がっていました。オープンモデルがその前提を崩した瞬間、株価は再評価を迫られます。

第二に、価値の取り分が「売る側」から「使う側」へ移りつつあること。推論単価が下がれば、AIを組み込んでサービスを提供する事業者の粗利は改善します。逆に、チップやクラウドを売る側は、同じ売上を維持するためにより多くの数量を必要とします。今週の決算で問われているのは、まさにこの7,250億ドルが売上に変換されているかという一点です。

第三に、壊れるのはいつもレバレッジからということ。韓国の120万口座の追証は、指数が20%下げただけで信用取引が連鎖的に清算される様子を見せました。同じ方向に賭けていても、借入で建てているかどうかで結果はまったく変わります。

まとめ 安くなるAI、揺れる株価

まとめ — 安くなるAI、揺れる株価

フィラデルフィア半導体株指数は6月末の最高値から20%超下落し、弱気相場入りしました。3月安値からの上昇率が105%だったことを思えば、急騰の巻き戻しという側面も大きいでしょう。引き金となったのは、2.8兆パラメータで入力3ドル・出力15ドルという低価格を掲げた中国発のオープンモデル、Kimi K3でした。

私たちの生活から見ると、この構図はむしろ追い風です。AIを使う費用が下がれば、文章作成、画像生成、翻訳、業務自動化といったサービスの価格は下がり、無料枠は広がります。すでに使っているツールが、同じ料金でより賢くなる——そういう形で恩恵は届きます。

一方で、AI関連株を持っている人にとっては話が別です。「AIが普及する」ことと「AI関連株が上がる」ことは、同じではありません。答え合わせは今週。7月22日のAlphabetを皮切りに、7,250億ドルの設備投資計画がどう語られるかが、当面の相場の方向を決めます。

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