その他資金調達
ABL(動産・債権担保融資)とは?売掛金・在庫を担保にした資金調達

ABL(動産・債権担保融資)の仕組み、担保にできる資産、審査基準、利用手順を徹底解説。売掛金や在庫を担保に融資を受ける方法で、不動産を持たない企業でも利用可能。向いている業種や注意点も紹介します。
「不動産を持っていないから担保融資は無理」「売掛金や在庫はあるのに、資金調達に活用できない」——こうした悩みを解決できるのが「ABL(動産・債権担保融資)」です。
ABLは、売掛金や在庫、機械設備などの「動産・債権」を担保に融資を受ける方法です。不動産を持たない企業でも、事業で保有する資産を活用して資金調達できるため、近年注目を集めています。
この記事では、ABLの基本的な仕組みから、担保にできる資産の種類、審査基準、利用手順、向いている企業・業種、注意点までをわかりやすく解説します。
ABLとは?基本的な仕組み
まずはABLの基本を理解しましょう。
ABLの定義と特徴
ABL(Asset Based Lending:アセット・ベースド・レンディング)とは、企業が保有する売掛債権、在庫、機械設備などの「動産・債権」を担保として融資を受ける方法です。日本語では「動産・債権担保融資」と呼ばれます。
【ABLの仕組み】
①売掛金・在庫・設備などを担保として提供 → ②金融機関が担保資産を評価 → ③評価額に応じた融資枠を設定 → ④債権譲渡登記・動産譲渡登記で担保権を設定 → ⑤定期的なモニタリングを受けながら融資を利用
ABLの特徴は、担保となる資産が「流動的」である点です。売掛金は回収されれば消滅し、在庫は販売されれば減少します。そのため、定期的に担保資産の状況を報告し、融資枠が見直される仕組みになっています。
担保にできる資産の種類
ABLで担保にできる主な資産は以下の通りです。
最も一般的なのは「売掛債権」と「在庫」を組み合わせた担保設定です。売掛金だけ、在庫だけでも利用可能ですが、複数の資産を組み合わせることで、より大きな融資枠を設定できます。
不動産担保融資との違い
ABLと不動産担保融資の違いを整理しておきましょう。
ポイント:ABLは不動産を持たない企業でも利用でき、事業の成長に合わせて融資枠が拡大する可能性があるのが特徴です。一方、定期的なモニタリング(報告)が必要なため、管理の手間がかかります。
ABLのメリット・デメリット
ABLを検討する際に知っておくべきメリットとデメリットを解説します。
メリット:不動産なしで担保融資・資産の有効活用
①不動産がなくても担保融資を受けられる
ABL最大のメリットは、不動産を持っていなくても担保融資を受けられる点です。売掛金や在庫など、事業活動で自然に発生する資産を活用して、無担保融資より有利な条件で借りられます。
②事業の成長に合わせて融資枠が拡大する
ABLでは、担保となる売掛金や在庫が増えれば、それに応じて融資枠も拡大します。事業が成長するほど調達できる資金も増えるため、成長期の企業にとって有利な仕組みです。
③無担保融資と併用できる
ABLは既存の銀行融資と併用できます。無担保での借入枠を使い切っている場合でも、ABLを追加で利用することで、さらなる資金調達が可能になります。
④資金使途が比較的自由
ABLで調達した資金は、運転資金や設備投資など、比較的自由に使えます。補助金のような使途制限がないため、経営判断に応じた柔軟な資金活用が可能です。
デメリット:管理負担・対応金融機関の少なさ
①定期的なモニタリング・報告が必要
ABLでは、担保資産(売掛金・在庫)の状況を定期的に金融機関に報告する義務があります。月次や週次で売掛金の明細や在庫リストを提出するなど、管理の手間がかかります。
- 売掛金の回収状況、在庫の増減を定期報告
- 報告が遅れると融資枠に影響する可能性
- 社内の管理体制整備が求められる
②対応できる金融機関が限られる
ABLは不動産担保融資に比べて対応できる金融機関が少なく、すべての銀行で取り扱っているわけではありません。地方銀行や信用金庫では対応していない場合もあります。
③担保評価の仕組みが複雑
売掛金や在庫の評価は、不動産のように市場価格が明確ではないため、金融機関ごとに評価基準が異なります。思ったほどの融資額が出ないケースもあります。
④融資実行までに時間がかかる
担保資産の調査・評価に時間がかかるため、申込から融資実行まで2週間〜1ヶ月程度を要することが一般的です。急ぎの資金需要には対応しにくい面があります。
ABLの担保評価と融資可能額
ABLでいくら借りられるかは、担保資産の評価によって決まります。評価の仕組みを理解しておきましょう。
売掛債権の評価方法
売掛債権の評価では、主に以下の点が確認されます。
- 売掛先の信用力:大手企業・上場企業向けの売掛金は高評価
- 売掛金の回収実績:過去の回収率・遅延状況
- 支払サイト:支払期日までの期間(短いほど高評価)
- 売掛金の分散度:特定の取引先に集中していないか
売掛債権の担保評価額は、一般的に額面の70〜90%程度が目安です。ただし、売掛先の信用力や取引実績によって大きく変動します。
在庫・動産の評価方法
在庫・動産の評価は、売掛債権より複雑です。以下の点が考慮されます。
- 換金性:すぐに売却できるか、買い手がいるか
- 市場性:中古市場が存在するか(機械設備など)
- 品質・状態:劣化・陳腐化のリスクはないか
- 保管状況:適切に管理・保管されているか
- 所有権の明確性:他者の担保権が設定されていないか
在庫の担保評価額は、一般的に帳簿価格の30〜70%程度が目安です。換金性の高い汎用品は高く評価され、特注品や季節商品は低く評価される傾向があります。
担保掛目の目安
ABLの担保掛目(融資可能額÷担保評価額)は、資産の種類によって異なります。
【例】ABLの融資可能額
- 売掛債権3,000万円(担保掛目70%)→ 2,100万円
- 在庫2,000万円(担保掛目50%)→ 1,000万円
- 合計融資可能額:約3,100万円
ABLの審査基準
ABLの審査では、担保資産の評価に加えて、企業の事業継続性も確認されます。
担保資産の質と管理状況
審査で最も重視されるのは、担保となる資産の「質」です。
- 売掛債権:売掛先の信用力、回収実績、分散度
- 在庫:換金性、保管状況、在庫管理の精度
- 機械設備:稼働状況、市場価値、メンテナンス状況
在庫の管理が杜撰な企業や、売掛金の回収に問題がある企業は、審査で不利になります。
事業の継続性・安定性
ABLは継続的な取引を前提とした融資であるため、事業の継続性・安定性も審査されます。
- 安定した売上・取引があるか
- 主要取引先との関係は良好か
- 事業計画に妥当性があるか
- 返済原資(キャッシュフロー)は確保できるか
ただし、不動産担保融資や銀行のプロパー融資と比較すると、業績や財務内容に関する審査基準は緩やかな傾向があります。
審査に必要な書類
ABLの審査で一般的に求められる書類は以下の通りです。
ABLの利用手順
ABLを利用する際の具体的な手順を解説します。
STEP1:金融機関への相談・申込
まずはABLを取り扱っている金融機関に相談します。ABLを積極的に推進している金融機関には、政府系金融機関(日本政策金融公庫、商工中金など)、一部の地方銀行、ノンバンクがあります。
- 取引のある金融機関にABLの取扱があるか確認
- 担保にできる資産の概要を伝えて相談
- 申込書類を提出
STEP2:担保資産の調査・評価
金融機関が担保となる資産を調査・評価します。売掛金の回収状況や在庫の保管状況などが確認されます。
- 売掛債権の明細確認、取引先の信用調査
- 在庫の現地調査(倉庫・工場への訪問)
- 機械設備の稼働確認、市場価値調査
この調査には1〜3週間程度かかるのが一般的です。
STEP3:契約・担保設定(債権譲渡登記・動産譲渡登記)
審査を通過したら、融資契約を締結し、担保権を設定します。ABLでは「債権譲渡登記」「動産譲渡登記」という方法で担保権を公示します。
【担保設定の方法】
- 債権譲渡登記:売掛債権を担保にする際に、法務局で登記を行う
- 動産譲渡登記:在庫や機械設備を担保にする際に、法務局で登記を行う
これらの登記を行うことで、金融機関は担保権を第三者に主張できるようになります。
STEP4:融資実行・モニタリング開始
担保設定が完了したら、融資金が実行されます。ABLでは融資後も継続的なモニタリングが行われます。
- 月次または週次で売掛金・在庫の状況を報告
- 担保資産の増減に応じて融資枠が見直される場合もある
- 定期的な訪問調査が行われることもある
ABLが向いている企業・業種
ABLは以下のような企業・業種に特に向いています。
在庫を多く抱える製造業・卸売業
製造業や卸売業は、原材料・仕掛品・製品・商品など多くの在庫を抱えています。これらの在庫を担保にすることで、運転資金を調達できます。
- 在庫の換金性が高い(汎用品・定番商品)企業
- 在庫管理がしっかりしている企業
- 季節変動で在庫が増える時期に資金需要がある企業
売掛金が多い建設業・IT業
建設業やIT業は、工事代金やシステム開発費など、高額な売掛金が発生しやすい業種です。売掛金を担保にしたABLが有効です。
- 大手企業との取引が多い企業(売掛先の信用力が高い)
- 入金サイトが長く、資金繰りに課題がある企業
- プロジェクトベースで売掛金が変動する企業
不動産を持たない成長企業
創業間もない企業やIT企業など、不動産を持たない成長企業にとって、ABLは有力な選択肢です。
- 不動産担保融資が使えないが、担保融資を受けたい企業
- 売上・取引が拡大しており、それに見合った融資枠を確保したい企業
- 無担保融資の枠を使い切っている企業
ポイント:ABLは事業の成長に合わせて融資枠が拡大する仕組みのため、成長フェーズにある企業には特にメリットが大きい資金調達方法です。
ABLを利用する際の注意点
ABLを利用する際は、以下の点に注意しましょう。
定期的な報告義務がある
ABLでは、担保資産の状況を定期的に金融機関に報告する義務があります。報告を怠ったり、内容に問題があると、融資枠の縮小や契約解除につながる可能性があります。
- 売掛金の明細(新規発生・回収・残高)
- 在庫の明細(入庫・出庫・残高)
- 報告頻度は月次〜週次が一般的
社内の管理体制を整備し、正確なデータを報告できる仕組みを構築することが重要です。
担保資産の処分に制限がかかる
ABLで担保に入れた資産(在庫・設備など)を処分する際は、金融機関への報告や承諾が必要になる場合があります。通常の事業活動の範囲内での在庫販売は問題ありませんが、大量の在庫処分や設備の売却には制限がかかることがあります。
ファクタリングとの違いを理解する
売掛債権を活用した資金調達という点では、ABLとファクタリングは似ていますが、重要な違いがあります。
ABLは継続的な融資枠の確保に向いており、ファクタリングは急ぎの資金需要や一時的な資金化に向いています。目的に応じて使い分けましょう。
この記事のまとめ
- ABLは売掛金・在庫・機械設備などを担保に融資を受ける方法
- 不動産がなくても担保融資を受けられるのが最大のメリット
- 担保掛目は売掛債権で50〜90%、在庫で30〜70%程度が目安
- 定期的なモニタリング(報告義務)があるため、管理体制の整備が必要
- 製造業・卸売業・建設業・IT業など、売掛金や在庫の多い業種に最適
まずは相談してみよう
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