その他資金調達
リースバックとは?不動産・設備を売却して資金調達する方法

リースバックの仕組み、メリット・デメリット、売却価格と賃料の相場を解説。不動産や機械設備、車両を売却して資金を得ながら使用を継続できる方法。向いているケースや注意点、利用手順も紹介します。
「事業用の不動産を売りたいが、売却後も使い続けたい」「設備を現金化したいが、業務に必要なので手放せない」——こうした悩みを解決できるのが「リースバック」です。
リースバックは、保有する不動産や設備を売却してまとまった資金を得ながら、そのまま賃借して使用を継続できる方法です。融資とは異なり負債が増えないため、財務状況の改善にも活用されています。
この記事では、リースバックの基本的な仕組みから、メリット・デメリット、売却価格と賃料の相場、利用手順、注意点までをわかりやすく解説します。
リースバックとは?基本的な仕組み
まずはリースバックの基本を理解しましょう。
リースバックの定義と流れ
リースバックとは、保有する資産(不動産、機械設備、車両など)を売却して資金を得た後、その資産を買主から賃借して使用を継続する取引です。「セール・アンド・リースバック(Sale and Leaseback)」とも呼ばれます。
【リースバックの流れ】
①資産(不動産・設備など)をリースバック会社に売却 → ②売却代金を受け取る → ③同時に賃貸借契約(リース契約)を締結 → ④毎月リース料(賃料)を支払いながら使用継続
リースバックの最大の特徴は、「売却」と「賃借」が同時に行われる点です。売却によってまとまった資金を得られる一方、資産を手放しても使用を継続できるため、事業や生活への影響を最小限に抑えられます。
リースバックの対象となる資産
リースバックは、さまざまな資産を対象に行われています。
最も一般的なのは不動産のリースバックですが、近年は機械設備や車両のリースバックも増えています。
セール・アンド・リースバックとの違い
「リースバック」と「セール・アンド・リースバック」は、基本的に同じ意味で使われます。どちらも「売却して借り戻す」という取引を指します。
厳密に言えば、「セール・アンド・リースバック」が正式名称で、「リースバック」はその略称です。不動産業界では「リースバック」、設備や車両では「セール・アンド・リースバック」と呼ばれることが多い傾向があります。
ポイント:リースバックは「融資」ではなく「売却+賃借」の組み合わせです。そのため、借入金として負債に計上されず、財務諸表上はオフバランス化できる点が大きな特徴です。
リースバックのメリット・デメリット
リースバックを検討する際に知っておくべきメリットとデメリットを解説します。
メリット:まとまった資金・使用継続・負債計上なし
①まとまった資金を一括で調達できる
リースバックでは、資産の売却代金を一括で受け取れます。不動産であれば数千万円〜数億円、設備でも数百万円〜数千万円といったまとまった資金を調達できます。
②売却後も資産を使い続けられる
通常の売却では資産を手放す必要がありますが、リースバックなら売却後も賃借して使用を継続できます。事業や生活を中断する必要がありません。
③負債が増えない(オフバランス化)
リースバックは融資ではなく売却なので、借入金として負債に計上されません。貸借対照表上の負債が増えないため、財務指標の改善や銀行格付けの維持に効果があります。
④審査が融資より通りやすい
リースバックの審査は、資産の価値が重視されます。融資の審査に通らない企業でも、価値のある資産があればリースバックを利用できる可能性があります。
⑤固定資産の維持管理負担から解放される
不動産の場合、売却後は所有者ではなくなるため、固定資産税や大規模修繕の負担がなくなります(契約内容によります)。
デメリット:所有権喪失・長期コスト・賃料負担
①資産の所有権を失う
リースバック最大のデメリットは、資産の所有権を失うことです。売却した資産は自分のものではなくなり、将来の値上がり益を得ることもできません。
- 不動産の場合、将来の資産価値上昇の恩恵を受けられない
- 相続や担保としての活用ができなくなる
- 経営の自由度が制限される可能性
②長期的には割高になることがある
リースバックでは、売却価格が市場価格より低くなる傾向があり、かつ毎月のリース料を支払い続けます。長期的に見ると、保有し続けた場合や通常の融資と比べてコストが高くなることがあります。
③毎月のリース料(賃料)負担が発生する
売却後は毎月リース料を支払う必要があります。資金繰りが改善しない場合、リース料の支払いが経営を圧迫する可能性があります。
④契約終了後の対応が必要
リース契約には期間があり、契約終了時には更新、退去、買戻しのいずれかを選択する必要があります。更新できない場合や、買戻し価格が高い場合もあります。
リースバックの種類と特徴
リースバックは対象となる資産によって特徴が異なります。代表的な3種類を解説します。
不動産リースバック
不動産リースバックは、事業用不動産(オフィス、工場、倉庫、店舗)や居住用不動産(自宅)を売却して資金調達する方法です。最も一般的なリースバックの形態です。
不動産リースバックは、不動産会社、リースバック専門会社、投資会社などが買主となります。近年は個人向けの住宅リースバックも増えており、老後資金の確保や住宅ローンの返済に活用されています。
機械設備リースバック
機械設備リースバックは、製造機械や医療機器などの設備を売却して資金調達する方法です。設備を使い続けながらまとまった資金を得られます。
リース会社や設備取扱業者が買主となることが多いです。設備の評価が重要で、汎用性の高い設備ほど高く売却できます。
車両リースバック
車両リースバックは、トラック、バス、営業車両などを売却して資金調達する方法です。運送業や物流業で多く利用されています。
中古車市場が確立しているため、車両リースバックは比較的スピーディーに進みます。カーリース会社や中古車販売会社が買主となります。
リースバックの売却価格と賃料の相場
リースバックを検討する際に気になる、売却価格とリース料の相場を解説します。
売却価格の決まり方
リースバックの売却価格は、通常の市場売却価格より低くなる傾向があります。これは、買主が「賃貸物件として運用する」前提で購入するためです。
【売却価格の目安】
- 不動産:市場価格の70〜90%程度
- 機械設備:時価の60〜80%程度
- 車両:中古車市場価格の70〜90%程度
売却価格に影響する主な要素は以下の通りです。
- 資産の市場価値:立地、築年数、状態、需要など
- リース期間:長期契約ほど安定収益が見込めるため高評価
- リース料の設定:高いリース料を受け入れれば売却価格も上がる
- 買戻し特約の有無:買戻し特約があると売却価格に影響
リース料(賃料)の相場
リース料は、売却価格に対する利回りで設定されることが一般的です。
【例】不動産リースバックの場合
- 不動産の市場価格:5,000万円
- リースバック売却価格:4,000万円(80%)
- 年間リース料率:10%
- 年間リース料:400万円
- 月額リース料:約33万円
買戻し特約について
リースバックには「買戻し特約」をつけられる場合があります。これは、一定期間後に売却した資産を買い戻せる権利を契約で定めるものです。
- 買戻し価格:売却価格と同額〜120%程度が一般的
- 買戻し期間:2〜10年程度の期間内に買い戻す
- 注意点:買戻し特約があると売却価格が低くなる傾向
将来的に資産を取り戻したい場合は、買戻し特約の有無と条件を事前に確認しましょう。
リースバックの利用手順
リースバックを利用する際の具体的な手順を解説します。
STEP1:リースバック会社への相談
まずはリースバックを取り扱っている会社に相談します。不動産リースバックであれば不動産会社やリースバック専門会社、設備・車両であればリース会社や専門業者に問い合わせます。
- 売却を検討している資産の情報を伝える
- 希望する条件(売却価格、リース料、契約期間)を伝える
- 複数社に相談して条件を比較する
STEP2:査定・条件提示
リースバック会社が資産の査定を行い、売却価格とリース料の条件を提示します。
- 不動産の場合:現地調査、登記簿確認、市場価格調査
- 設備・車両の場合:実物確認、年式・状態の確認、市場価値調査
査定から条件提示まで、不動産で1〜2週間、設備・車両で数日〜1週間程度が目安です。
STEP3:売買契約・賃貸借契約の締結
条件に合意したら、売買契約と賃貸借契約(リース契約)を同時に締結します。
⚠ 契約時の確認ポイント
- 売却価格と支払い方法
- リース料の金額と支払い条件
- 契約期間と更新条件
- 買戻し特約の有無と条件
- 中途解約の可否と違約金
- 原状回復義務の範囲
STEP4:資金受領・リース開始
契約締結後、売却代金が支払われ、同時にリース契約がスタートします。不動産の場合は所有権移転登記が行われます。
【資金化までの目安】
- 不動産:2週間〜1ヶ月程度
- 機械設備:1〜3週間程度
- 車両:数日〜2週間程度
リースバックが向いているケース
リースバックは以下のようなケースで特に有効です。
急ぎでまとまった資金が必要な場合
銀行融資は審査に時間がかかりますが、リースバックは比較的スピーディーに資金化できます。急な資金需要や、融資の審査を待てない場合に有効です。
- 取引先への支払いが迫っている
- 事業拡大のチャンスを逃したくない
- 税金や社会保険料の支払い期限が近い
融資の審査に通らない場合
業績悪化や債務超過などで銀行融資の審査に通らない場合でも、価値のある資産があればリースバックを利用できる可能性があります。
- 赤字が続いて銀行融資が難しい
- 借入枠を使い切っている
- 信用情報に問題がある
負債を増やさずに資金調達したい場合
リースバックは融資ではなく売却なので、負債として計上されません。財務指標の改善や、銀行格付けの維持・向上を図りたい場合に適しています。
- 自己資本比率を維持・改善したい
- 有利子負債を増やしたくない
- 銀行との融資交渉を有利に進めたい
ポイント:リースバックは「資産はあるが現金がない」という状況を解決する手段です。不動産や設備を売却して現金化しつつ、事業は通常通り継続できるのが大きな強みです。
リースバックを利用する際の注意点
リースバックを利用する際は、以下の点に注意しましょう。
長期的なコストを試算する
リースバックは短期的にはまとまった資金を得られますが、長期的にはリース料の支払いが続きます。融資を受けた場合と比較して、どちらが有利かを試算しましょう。
【例】5年間の総コスト比較
リースバックの場合
- 売却で得た資金:4,000万円
- 5年間のリース料合計:2,000万円(年400万円×5年)
- 実質調達コスト:2,000万円
融資の場合
- 借入金:4,000万円
- 5年間の利息合計:約600万円(年利3%の場合)
- 実質調達コスト:約600万円
上記の例では、融資の方がコストは低くなります。ただし、融資の審査に通らない場合や、負債を増やせない場合はリースバックを選択する価値があります。
契約内容を細部まで確認する
リースバックの契約は複雑になることがあります。以下の点を特に確認しましょう。
- 契約期間と更新条件:更新が保証されているか、更新時の条件変更はあるか
- リース料の改定:契約期間中にリース料が上がる可能性はあるか
- 中途解約:中途解約は可能か、違約金はいくらか
- 原状回復義務:退去時にどこまで原状回復が必要か
- 買戻し条件:買戻しの価格、期限、条件は明確か
🚫 注意すべき契約条項
- 「定期借家契約」で更新がない場合、契約終了後に退去が必要
- 買戻し特約がない場合、将来買い戻すことはできない
- リース料の大幅な値上げ条項が含まれていないか確認
複数社から見積もりを取る
リースバックの条件は会社によって大きく異なります。必ず複数社から見積もりを取り、条件を比較しましょう。
- 売却価格の比較(高いほど有利)
- リース料の比較(安いほど有利)
- 契約条件の比較(更新条件、買戻し条件など)
- 会社の信頼性(実績、評判、財務状況)
1社だけの提案で決めず、最低でも3社程度から見積もりを取ることをおすすめします。
この記事のまとめ
- リースバックは、資産を売却して資金を得ながら使用を継続できる方法
- 融資と異なり負債が増えないため、財務指標の改善に効果的
- 売却価格は市場価格の70〜90%程度、リース料は年7〜25%程度が相場
- 長期的なコストは融資より高くなる可能性があるため、試算が重要
- 契約内容を細部まで確認し、複数社から見積もりを取ることが大切
まずは相談してみよう
「リースバックが自社に合っているか知りたい」「売却価格やリース料の相場を確認したい」という方は、お気軽にご相談ください。
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