その他資金調達
動産担保融資とは?機械設備・在庫で資金調達する方法と注意点

動産担保融資の仕組み、担保にできる資産、評価方法、審査基準を解説。機械設備や在庫、車両を担保に融資を受ける方法で、不動産がなくても利用可能。ABLやリースバックとの違い、動産譲渡登記の仕組みも紹介します。
「高額な機械設備を持っているが、資金調達に活用できないか」「在庫や車両を担保にお金を借りられると聞いたが、どういう仕組みなのか」——こうした疑問を持つ経営者も多いのではないでしょうか。
動産担保融資は、機械設備や在庫、車両などの「動産」を担保に融資を受ける方法です。不動産を持たない企業でも、事業で使用している設備や商品を活用して資金調達できます。
この記事では、動産担保融資の基本的な仕組みから、担保にできる資産の種類、評価方法、審査基準、利用手順、注意点までをわかりやすく解説します。
動産担保融資とは?基本的な仕組み
まずは動産担保融資の基本を理解しましょう。
動産担保融資の定義
動産担保融資とは、企業が保有する機械設備、在庫、車両などの「動産」を担保として金融機関に提供し、融資を受ける方法です。不動産以外の有形資産を担保にできるため、不動産を持たない企業でも担保融資を利用できます。
【動産と不動産の違い】
- 不動産:土地、建物など、移動できない財産
- 動産:機械、設備、在庫、車両など、移動できる財産(不動産以外のすべての有形物)
動産担保融資は、2005年に施行された「動産譲渡登記制度」によって法的な裏付けが整備され、利用が広がりました。従来は動産を担保にしても第三者に対抗する手段が限られていましたが、登記制度の整備により、金融機関が安心して動産を担保に取れるようになりました。
担保にできる動産の具体例
動産担保融資で担保にできる主な資産は以下の通りです。
ポイント:担保にできるかどうかは「換金性」が重要です。中古市場が確立している機械設備や車両は担保として評価されやすく、特殊な用途に限定される設備は評価が難しい傾向があります。
動産譲渡登記制度とは
動産担保融資を支える法的な仕組みが「動産譲渡登記制度」です。2005年10月に施行され、動産を担保にした取引の安全性が高まりました。
動産譲渡登記を行うことで、以下のメリットがあります。
- 第三者対抗要件の具備:担保権を第三者に主張できる
- 二重譲渡の防止:同じ動産が複数の担保に使われることを防ぐ
- 担保権の公示:登記を確認すれば担保の有無がわかる
登記は法務局で行い、登記事項はオンラインで確認できます。登記費用は1件あたり7,500円(登録免許税)に加え、司法書士への報酬が発生します。
動産担保融資のメリット・デメリット
動産担保融資を検討する際に知っておくべきメリットとデメリットを解説します。
メリット:不動産不要・遊休資産の活用
①不動産がなくても担保融資を受けられる
動産担保融資の最大のメリットは、不動産を持っていなくても担保融資を受けられる点です。土地や建物を所有していない企業でも、機械設備や車両、在庫があれば資金調達の道が開けます。
②遊休資産を有効活用できる
使用頻度の低い機械設備や、保管中の在庫など、いわゆる「遊休資産」も担保として活用できます。眠っている資産を資金調達に役立てることで、資産効率を高められます。
③無担保融資より有利な条件で借りられる
担保があることで金融機関のリスクが軽減されるため、無担保のビジネスローンより低い金利、または高い融資額を期待できます。
④業績が悪くても審査に通る可能性がある
動産担保融資では、担保となる動産の価値が重視されます。業績が悪化している企業でも、価値のある設備や在庫があれば融資を受けられる可能性があります。
デメリット:評価の難しさ・取扱金融機関の少なさ
①担保評価が難しく、時間がかかる
動産は不動産と違い、市場価格が明確でない場合が多く、評価が難しいというデメリットがあります。専門の鑑定士や評価会社による調査が必要なケースもあり、審査に時間がかかります。
- 評価基準が金融機関によって異なる
- 専門的な知識がないと適正な評価が難しい
- 評価費用がかかる場合がある
②取扱金融機関が限られる
動産担保融資を積極的に取り扱っている金融機関は、不動産担保融資に比べて少ないのが現状です。都市銀行や大手地方銀行、一部のノンバンクに限られる傾向があります。
③担保価値が下がるリスクがある
機械設備は経年劣化や技術革新によって価値が下がり、在庫は陳腐化や劣化のリスクがあります。担保価値が下がると、追加担保を求められたり、融資枠が縮小される可能性があります。
④処分時の換金に時間がかかる
万が一返済不能になった場合、金融機関は担保動産を処分して回収しますが、不動産に比べて売却先を見つけるのが難しく、換金に時間がかかることがあります。
動産担保融資の担保評価
動産担保融資でいくら借りられるかは、担保となる動産の評価によって決まります。資産の種類ごとに評価のポイントを解説します。
機械設備の評価ポイント
機械設備を担保にする場合、以下の点が評価されます。
- 中古市場の有無:中古市場が確立している機械は高評価
- 汎用性:特定用途に限定されない汎用機械は評価されやすい
- メーカー・機種:有名メーカーの人気機種は市場価値が高い
- 年式・稼働時間:新しく、稼働時間が少ないほど高評価
- メンテナンス状況:定期点検・整備記録があると有利
- 付属品・オプション:付属品が揃っていると価値が上がる
【評価されやすい機械設備の例】
- 工作機械(旋盤、フライス盤、マシニングセンタ)
- 印刷機械(オフセット印刷機)
- 食品加工機械
- 医療機器(CT、MRI、レントゲンなど)
在庫の評価ポイント
在庫を担保にする場合は、以下の点が重視されます。
- 換金性:すぐに売れる商品かどうか
- 汎用性:特定の取引先向けでない一般的な商品か
- 品質・状態:劣化や破損がないか
- 保管状況:適切な環境で保管されているか
- 在庫管理の精度:正確な在庫データがあるか
- 季節性:季節商品は評価が下がりやすい
在庫の評価は機械設備より難しく、評価額は帳簿価格の30〜50%程度にとどまることが多いです。
車両・建設機械の評価ポイント
車両や建設機械は中古市場が比較的整備されているため、評価しやすい動産です。
- 車種・メーカー:人気車種・有名メーカーは高評価
- 年式・走行距離:新しく、走行距離が少ないほど高評価
- 車検・整備記録:車検が残っている、整備記録があると有利
- 市場流通量:中古市場での流通量が多いと売却しやすい
トラックや建設機械は中古市場が活発なため、比較的高い評価を受けやすい傾向があります。
担保掛目と融資可能額の目安
動産担保融資の担保掛目(融資可能額÷担保評価額)は、動産の種類や換金性によって異なります。
【例】動産担保融資の融資可能額
- 工作機械(時価1,000万円、担保掛目60%)→ 600万円
- トラック5台(時価1,500万円、担保掛目60%)→ 900万円
- 合計融資可能額:約1,500万円
動産担保融資の審査基準と必要書類
動産担保融資の審査で重視されるポイントと必要書類を解説します。
審査で重視されるポイント
動産担保融資の審査では、以下の点が確認されます。
①担保動産の評価
- 動産の種類、状態、換金性
- 中古市場での流通価格
- メンテナンス状況、付属品の有無
②所有権の確認
- 担保にする動産が自社所有であるか
- リース・レンタル品ではないか
- 他の担保権が設定されていないか
③返済能力
- 事業の収益性、キャッシュフロー
- 既存の借入状況
- 返済計画の妥当性
ただし、動産担保融資は担保価値を重視するため、業績や財務内容に関する審査は不動産担保融資より柔軟な傾向があります。
必要書類一覧
動産担保融資の審査で一般的に求められる書類は以下の通りです。
動産担保融資の利用手順
動産担保融資を利用する際の具体的な手順を解説します。
STEP1:金融機関への相談
まずは動産担保融資を取り扱っている金融機関に相談します。すべての金融機関が対応しているわけではないため、事前に取扱の有無を確認しましょう。
- 取引銀行に動産担保融資の取扱があるか確認
- 政府系金融機関(日本政策金融公庫など)も選択肢
- 動産担保融資に積極的なノンバンクもある
STEP2:動産の調査・評価
金融機関が担保となる動産を調査・評価します。現地調査が行われることも多く、機械設備や在庫の実物を確認されます。
- 現地調査(工場・倉庫への訪問)
- 動産の確認(型式、年式、状態)
- 市場価値の調査
- 評価会社による鑑定(必要に応じて)
調査・評価には1〜3週間程度かかるのが一般的です。
STEP3:契約・動産譲渡登記
審査を通過したら、融資契約を締結し、動産譲渡登記を行います。
【動産譲渡登記の流れ】
①譲渡契約書の作成 → ②必要書類の準備(登記原因証明情報など) → ③法務局への登記申請 → ④登記完了(通常1週間程度)
登記費用は、登録免許税7,500円+司法書士報酬(3〜10万円程度)が目安です。
STEP4:融資実行
動産譲渡登記が完了したら、融資金が指定口座に振り込まれます。申込から融資実行までの期間は、おおむね2〜4週間程度が目安です。
動産担保融資とABL・リースバックの違い
動産担保融資と似た仕組みであるABL、リースバックとの違いを整理します。
ABL(動産・債権担保融資)との関係
ABL(Asset Based Lending)は、動産担保融資を含むより広い概念です。
動産担保融資は、ABLの中で「動産のみ」を担保にするケースと考えればわかりやすいでしょう。売掛金も担保にしたい場合は、ABLとして売掛債権も含めた担保設定を検討します。
リースバックとの違い
リースバックは、動産を「売却」して資金を得る方法で、担保融資とは根本的に異なります。
所有権を手放したくない場合は動産担保融資、負債を増やしたくない場合やより多くの資金を調達したい場合はリースバックが向いています。
動産担保融資を利用する際の注意点
動産担保融資を利用する際は、以下の点に注意しましょう。
動産の処分に制限がかかる
担保に入れた動産は、金融機関の同意なく売却・処分することが制限されます。事業に必要な設備を担保にする場合は、この制限が業務に影響しないか確認しましょう。
⚠ 注意
担保動産を無断で売却・処分すると、契約違反となり、一括返済を求められる可能性があります。設備の入替えや売却を行う場合は、事前に金融機関に相談しましょう。
担保価値が下がるリスクがある
機械設備は経年劣化や技術革新によって価値が下がります。特に技術の進歩が早い業界では、数年で設備の市場価値が大幅に下落することがあります。
- 定期的なメンテナンスで価値を維持する
- 担保価値の下落を見越した借入計画を立てる
- 追加担保を求められる可能性を想定しておく
適正な評価ができる業者を選ぶ
動産の評価は専門性が求められるため、適正な評価ができる金融機関や評価会社を選ぶことが重要です。評価が低すぎると十分な融資を受けられず、高すぎると返済に苦しむことになります。
- 複数の金融機関に相談し、評価を比較する
- 業界に詳しい金融機関を選ぶ(建設機械なら建設業に強い金融機関など)
- 評価の根拠を確認し、納得した上で契約する
この記事のまとめ
- 動産担保融資は、機械設備・在庫・車両などを担保に融資を受ける方法
- 不動産がなくても利用でき、遊休資産を有効活用できる
- 担保掛目は動産の種類や換金性によって20〜70%程度
- 動産譲渡登記により担保権を公示し、第三者に対抗できる
- 担保価値の下落リスクや処分制限に注意が必要
まずは相談してみよう
「保有している機械設備を担保に融資を受けたい」「動産担保融資が自社に合っているか相談したい」という方は、お気軽にご相談ください。
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