週刊国際情勢レポート
力が支配する世界 対話の裏で続く攻撃と圧力|ビジネスリーダーが備えるべきこと【週刊】国際情勢レポート|2026年1月24日〜30日
2026年1月24日〜30日の国際情勢を経営者向けに解説。高市首相の電撃解散、イラン大虐殺、トランプ政権のグリーンランド圧力とベネズエラ介入など、今週の重要ニュースと経営への影響をまとめました。
2026年1月24日〜30日の1週間、国際社会は激動の渦に巻き込まれました。国内では高市早苗首相が就任わずか3ヶ月で衆院を電撃解散し、2月8日投開票に向けて戦後最短の選挙戦に突入。一方、国際社会ではトランプ大統領がグリーンランド買収を再び持ち出し、イランでは反政府デモ鎮圧で推定3万人以上が犠牲となる大虐殺が明るみに。ベネズエラでは1月初旬のマドゥロ大統領拘束後の混乱が続いています。経営者が注目すべきは、**国内の政治空白期間による政策執行の遅れと、世界各地で同時多発する「力による介入」が示す新たな国際秩序の混沌**です。
今週の経営リスクサマリー
今週のタイムライン
国際情勢・地政学
今週の焦点
今週の国際情勢における最大のポイントは、日本国内では高市政権の電撃解散による政治空白の発生、海外ではトランプ政権の「力による介入主義」の鮮明化です。グリーンランド買収圧力、ベネズエラ政権転覆、イラン反政府デモへの軍事介入警告——これらはすべて、国際法や同盟関係よりも「アメリカの国益」を最優先するという明確なメッセージです。
【最重要】国内:高市政権、就任3ヶ月で電撃解散——2月8日投開票へ
1月23日、高市早苗首相は通常国会の冒頭で衆議院を解散しました。2025年10月21日の就任からわずか3ヶ月、1月27日公示・2月8日投開票という戦後最短の選挙戦に突入する異例の展開です。
💼 経営インパクト
2026年度予算の年度内成立は困難となり、暫定予算編成が確実視されています。企業の事業計画、特に公共事業関連や政府系予算に依存する分野では、資金繰りと計画見直しが必要です。選挙後の政策転換リスクも考慮すべきでしょう。
解散の背景
高市首相は1月19日の記者会見で、「高市早苗が総理でよいのかどうか、国民に決めていただく」と解散理由を説明しました。自民党と日本維新の会による連立政権は、前回の衆院選(2024年10月)では想定されておらず、有権者の審判を経ていないという点を強調しています。
内閣支持率は60〜70%台と高水準を維持しており、高市首相は「支持率が高いうちに勝負」という戦略を取ったと見られます。一方で、2026年度予算案の年度内成立が困難になることから、野党からは「国民生活を犠牲にした党利党略解散」との批判が出ています。
主な争点
今回の選挙では以下が主要な争点となります。第一に、積極財政の是非。高市首相は「責任ある積極財政」を掲げ、飲食料品の消費税を2年間ゼロにする案を打ち出しましたが、財源や実現可能性に疑問の声も。第二に、衆議院議員定数削減。維新との連立合意の柱ですが、自民党内でも慎重論が根強く残ります。第三に、外交・安全保障政策。日米同盟の今後、対中政策、台湾有事への対応などです。
選挙の見通し
解散時点で与党は衆院でわずかに過半数(233議席)を下回る230議席(自民196、維新34)でした。高市首相は「与党で過半数を目標とし、下回った場合は即刻退陣する」と明言しています。
注目すべきは、立憲民主党と公明党が合流して結成した「中道改革連合」の動向です。公明党は2025年10月に自民党との連立を離脱しており、従来の「公明票」が得られない自民党候補にとっては厳しい選挙戦となる可能性があります。
予算への影響
高市首相は、解散・総選挙によって2026年度予算案の年度内成立が難しくなることを認めつつ、「影響を最小限にするため短期決戦とした」と説明しました。しかし、暫定予算の編成は避けられない見通しで、企業の事業計画にも影響が及びます。
ガソリン・電気・ガス代の支援、子育て支援などは2025年度補正予算ですでに成立しており、選挙期間中も継続実施されるとしています。
イラン反政府デモ鎮圧で大虐殺——推定3万人以上が犠牲に
2025年12月28日以降、イラン全土で広がった反政府デモは、1月8日に治安部隊による大規模な鎮圧作戦に直面しました。人権団体の推計によると、1月8-9日の48時間だけで推定3万人以上が殺害され、1979年のイラン革命以来最大の虐殺となりました。
💼 経営インパクト
イラン政権の不安定化は、ホルムズ海峡の安全保障リスクを高め、原油価格の急騰要因となります。また、トランプ大統領の軍事介入警告により、中東全体の地政学リスクが上昇。エネルギーコストの変動に備えた調達戦略の見直しが必要です。
デモの背景
デモの直接的なきっかけは、経済状況の悪化でした。2025年6月のイスラエルとの「12日間戦争」後、イラン・リアルは急落し、インフレ率が急上昇。政府は給与引き上げをインフレ率の4割程度に抑える一方、治安維持予算を150%増額するなど、国民生活を犠牲にした政策を続けていました。
テヘランの大バザールの商人たちが店を閉め、経済政策に抗議したことから運動は始まり、瞬く間に全国31州すべてに拡大。若者だけでなく、裕福な家庭の人々、さらには子どもまでがデモに参加しました。
虐殺の実態
イラン政府は当初、デモに対して融和的な姿勢を示しましたが、1月8日に方針を転換。最高指導者ハメネイ師が「あらゆる手段でデモを鎮圧せよ」と命じたことで、治安部隊が実弾を使用した無差別射撃を開始しました。
テヘランやシーラーズの病院は銃創を負ったデモ参加者であふれかえり、通常業務を停止。目撃者によれば、テヘラン市内だけで「数百の遺体」が確認されたといいます。5歳の子どもが母親の腕の中で射殺されるなど、治安部隊は通行人さえも標的にしました。
イラン保健省の内部資料によれば、1月8-9日だけで少なくとも3万人が殺害されたとされ、これは1941年のナチスによるバビ・ヤール虐殺以来、銃撃による単一事件としては最大規模です。
インターネット遮断と情報統制
イラン政府は1月8日夜、全国的なインターネット遮断を実施しました。軍事用ジャマーを使ってスターリンク衛星通信も妨害し、当初30%だった遮断率は数時間で80%に達しました。この情報統制により、虐殺の実態は当初ほとんど外部に伝わりませんでした。
トランプ政権の反応
トランプ大統領は1月9日、「デモ参加者の殺害が続けば軍事介入する」と警告し、イラン関連ビジネスを行う国に対して25%の関税を即座に課すと発表しました。また、「MIGA(Make Iran Great Again)」というスローガンを掲げ、デモ参加者を「イラン愛国者」と呼んで支援を表明しています。
ただし、1月下旬時点では実際の軍事介入には至っておらず、イラン政権内部に亀裂の兆候も見られないことから、トランプ政権は介入を見送ったと見られています。
グリーンランド買収構想——トランプ流「領土拡大外交」の真意
1月21日、スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムで、トランプ大統領はグリーンランド買収への意欲を改めて表明しました。「力は使わない」と述べつつ、NATO事務総長との会談後に「枠組み合意に達した」と発表し、欧州諸国への関税脅迫を撤回しました。
💼 経営インパクト
グリーンランドの資源(レアメタル、レアアース)開発権をめぐる動きは、サプライチェーン再編の可能性を示唆します。また、北極圏の軍事拠点化が進めば、新たな航路開発や資源開発投資の機会が生まれる一方、地政学リスクも増大します。
「枠組み合意」の内容
トランプ大統領は、グリーンランドに関する「枠組み合意」がNATO事務総長マーク・ルッテとの会談で成立したと発表しました。具体的な内容は明らかにされていませんが、トランプ氏は「鉱物資源へのアクセスと、ゴールデンドーム(アメリカのミサイル防衛システム)の配備が含まれる」と述べています。
デンマークのフレデリクセン首相は「領土主権については交渉できない」としつつ、「北極圏の安全保障やゴールデンドームについて協議する用意がある」と前向きな姿勢を示しました。これは、完全な買収ではなく、軍事・資源面での協力強化に落ち着く可能性を示唆しています。
グリーンランドの戦略的価値
グリーンランドは北極海航路の要衝に位置し、アメリカ・ロシア・中国を結ぶ戦略的要地です。また、レアメタルやレアアースなどの資源が豊富で、特に中国の北極圏進出を牽制する上で重要な位置を占めます。
さらに、グリーンランドとアイスランド、イギリスを結ぶGIUKギャップは、北極から大西洋への海軍チョークポイントとして知られています。冷戦期にはソ連潜水艦の監視拠点として重要視されました。
関税圧力と軍事脅威
トランプ大統領は当初、グリーンランド買収に反対するデンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、イギリスの8カ国に対し、2月1日から10%、6月1日から25%の関税を課すと警告していました。
また、「軍事力を使わない」と明言する一方で、「拒否すれば、アメリカは覚えている」と暗に圧力をかけました。この発言は、経済的威圧と軍事的示唆を組み合わせた、トランプ流の交渉術と言えます。
国際秩序への影響
トランプ大統領のグリーンランド買収構想は、19世紀的な「領土買収外交」の復活を意味します。アラスカ購入(1867年)以来の伝統とも言えますが、現代の国際法の枠組みにおいては極めて異例です。
特に、デンマークはNATO加盟国であり、同盟国に対する経済的威圧は、NATO内部の亀裂を生む可能性があります。フランスのマクロン大統領は「根本的に受け入れられない」、イギリスのスターマー首相は「完全に間違っている」と批判しました。
ベネズエラ介入——アメリカの「モサド型作戦」が意味するもの
1月3日、アメリカ軍はベネズエラに侵攻し、ニコラス・マドゥロ大統領夫妻を拘束してニューヨークに連行しました。「作戦アブソリュート・リゾルブ」と名付けられたこの作戦は、イスラエルのモサドがアイヒマンを拘束した事件を彷彿とさせる秘密作戦でした。
💼 経営インパクト
ベネズエラ原油市場の再編が進む可能性があります。中国がベネズエラ原油の80%を輸入していましたが、アメリカの介入により原油供給ルートが変化。また、中南米ビジネス全体のリスク評価を見直す必要があります。
作戦の経緯
トランプ大統領は、マドゥロ拘束の1週間前に電話でマドゥロに「降伏するか、さもなくば」と最後通告を送っていました。マドゥロは降伏を拒否し、1月3日午前2時(現地時間)、アメリカ軍はベネズエラ北部のインフラを爆撃して防空網を無力化した後、デルタフォースがカラカスのマドゥロの邸宅を襲撃しました。
CIAチームは2025年8月からベネズエラ国内で秘密裏に活動しており、マドゥロの動向、食事、睡眠場所などを詳細に追跡。ベネズエラ政府内部の情報提供者も活用していたとされます。デルタフォースは、マドゥロの邸宅を模した訓練施設で数ヶ月にわたり訓練を重ねていました。
介入の目的
表向きの理由は、マドゥロがナルコテロリズム(麻薬テロ)に関与しているというものですが、真の狙いは中国の影響力排除にあると見られています。中国はベネズエラ原油の80%を輸入しており、ベネズエラはキューバ、イラン、ロシアとともに反米陣営の一翼を担っていました。
トランプ大統領は作戦後、「アメリカがベネズエラを運営する」と発言し、原油収入で作戦費用を賄うと述べました。ただし、マルコ・ルビオ国務長官は翌日、「アメリカは統治しない」と軌道修正しています。
国際法との齟齬
主権国家への一方的な軍事介入は、国連憲章の重大な違反です。国連安全保障理事会の緊急会合では、非同盟運動(125カ国)を含む多くの国が違法行為と非難しました。
一方、イギリスなど一部の西側諸国は、マドゥロ政権の人権侵害や麻薬密売を指摘しつつも、介入の違法性を明言することを避けました。この曖昧な対応が、アメリカの一方的行動を事実上容認する結果となっています。
トランプ政権の「介入主義」
グリーンランド、ベネズエラ、イラン——トランプ政権は一貫して「アメリカの利益のためなら、国際法も無視する」というメッセージを発信しています。これは、ルールに基づく国際秩序からの明確な離脱を意味します。
経営者にとって重要なのは、こうした「力による介入」が常態化する可能性です。中南米、中東、さらには東アジアでも、アメリカの軍事介入リスクを考慮したビジネス戦略が必要となるでしょう。
ウクライナ・ロシア情勢:三者会談と大規模攻撃——停戦への道は遠く
1月23-24日、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビでウクライナ・アメリカ・ロシアの三者会談が開催されました。しかし、会談直後の24日未明、ロシア軍はキーウに大規模攻撃を実施。ミサイル21発と無人機375機を発射し、1人が死亡、4人が負傷しました。
💼 経営インパクト
ウクライナ情勢の長期化は、エネルギー価格の変動要因であり続けます。また、サプライチェーンの混乱も継続。停戦観測が出ては消える状況が続くため、短期的な価格変動リスクに備える必要があります。
三者会談では戦争終結に向けたパラメーターが議論されましたが、具体的な成果は報じられていません。会談直後の攻撃は、「交渉と戦闘の二重構造」がウクライナ情勢の現実であることを示しています。
戦況は膠着状態が続いており、ロシアは2025年に4,336平方キロメートルを占領しましたが、これはウクライナ全土のわずか0.6%です。原油価格の下落がロシアの戦費調達を困難にしている一方、前線での戦闘は激しさを増しています。
中東情勢:ガザ停戦の行方とレバノン情勢
ガザ地区では、2025年1月に停戦合意が成立しましたが、3月には戦闘が再開。人道危機は継続しており、停戦の持続性に疑問符がついています。
イスラエルとイランの間では、2025年6月の「12日間戦争」以降、停戦が維持されていますが、根本的な問題は未解決のままです。
朝鮮半島・東アジア情勢:日韓首脳会談と台湾有事リスク
1月13-14日、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が訪日し、日韓首脳会談が行われました。対象週の直前ですが、両国関係は小康状態にあります。ただし、徴用工問題や歴史認識など根本的な課題は未解決です。
在韓アメリカ軍は台湾有事に備えた即応体制を整えており、ブランソン司令官は「韓国はもはや朝鮮半島の安全保障に限定されない」と発言。東アジア全体の安全保障環境が流動化していることを示唆しました。
北朝鮮は引き続きロシアにトルツを派遣しており、クルスク方面での戦闘で約3,000人の犠牲者を出しています。
アメリカ・中国関係・インド太平洋:トランプ政権1年、国際秩序の再編
1月20日、トランプ大統領は就任1周年を迎えました。この1年間で、アメリカは66の国際機関から脱退し、国際秩序の再編を進めています。
ダボス会議(1月19-23日)でのトランプ演説は、グリーンランド買収、エネルギー政策批判、欧州への警告など、多岐にわたりました。「アメリカ第一主義」を明確にし、同盟国であっても容赦しない姿勢を示しています。
アメリカと中国の対立は長期化しており、半導体規制、レアメタル規制、貿易制裁が継続しています。
東南アジア情勢:南シナ海の緊張と経済成長
中国による南シナ海での活動は継続しており、ASEAN諸国との緊張関係が続いています。ただし、今週は大きな動きは報じられていません。
アフリカ・その他:資源外交の活発化
アフリカ諸国では、資源外交が活発化しています。中国、アメリカ、欧州がレアメタルやエネルギー資源をめぐって競争を繰り広げています。
来週の注目ポイント
来週の重要イベント
来週の注目シナリオ
参考情報源
日本経済新聞、時事通信、NHK、Reuters、AP通信、Bloomberg、The Wall Street Journal、CNN、BBC、Al Jazeera、Britannica、The Guardian、Wikipedia、Congressional Research Service、Brookings Institution、Chatham House